よくある日記

『墓参の怪異』??

ご覧いただきありがとうございます

ここは私(みどペン)が、「育て辛っ!」と思う息子たちや、「クセ強っ!」と思う夫と、なんとか明るく楽しく穏やかに過ごすことを目指してあれこれやってみたり、やらなかったりする様子を、書いてみたり、書かなかったりするブログです。お時間とお気持ちの許す限りお楽しみください。

※今回は小説風です。

小説の定義もよくわからないまま、『准教授・高槻彰良の推察』シリーズを12冊分聞いた後に、村上春樹の『スプートニクの恋人』を聞いた…その直後に書き始めてます^^;

久々に村上春樹作品に触れたのですが…こんなにめんどくさい描写していいなら何だって書いていいかもなぁ…とか、気が大きくなっちゃって^^;

一応読み返したりして、自分でもなんのこっちゃ?的な部分は大いにありますが、書いちゃったし^^;アップしちゃえ…と^^;

 

お目汚しすみません…

お暇な方だけどうぞ。

Ⅰ 3連休

2024年9月。

誰の計らいかは分からないがカレンダーには3連休が2度組まれていた。

14日からの土日月。

22日からの土日月。

普段から月曜に仕事を入れずに毎週3連休を自作しているミド子はカレンダーを眺める視線にどうしても落胆の色をのせてしまう。

平日は「仕事に」「学校に」と出かけている家族にとってみると純粋にラッキーなことであろう。

ただ、家族の出払っている日の昼食は「白米+「何か」」という「極テキトーなもの」で済ませているミド子にとって、

ちなみに通信制高校に所属していて昼間もほとんど家にいる長男は「極テキトー昼食」の道連れだが、

土日の、そもそも何時に起きてくるかも分からない家族の、朝食・昼食・夕食をそれなりに整えるのは意外と面倒な話なのである。

そのことに気づいて以来、「主婦の休みは月曜」という意識でいることが最適解だと信じて過ごしているのだ。

その法則が崩れる。

しかも2週連続で。

 

そんなことはおくびにも出さず、むしろ朝食はいつもより凝った…例えばメレンゲでふっくら感を増したホットケーキにメイプルシロップとブルーベリージャムを添えたものに卵料理、きゅうりやトマトの生野菜を載せたプレートまでを、行ったこともない想像上のお洒落カフェの店員になったような気持ちで出したりもした。

 

子供たちがもう少し小さい頃は、3連休となれば「孫を見せに行こうか」と、呼ばれてなどいない義理の実家に押しかける家族であった。

夫が数年ごとに全国転勤ありの仕事に就いているために、目的地としての「義理の実家」は変わらずとも、「どこから向かうか」はその時々で変化に富んでいた。

ルート、宿泊地、観光地、それらを子供たちの成長具合を考えながら組み立てていく小旅行。

大抵の場所からは3日もあればちょこっと顔を出す程度には日本は狭い。

それを実現できるフットワークの軽さはミド子にとって嫌なものではなく、

むしろそれがミド子家の誇らしい部分だと思っているところもあった。

子供たちが大きくなるにつれ、その習慣もなんとなく下火になっていったことに多少の寂しさは感じていたが、

それはそれで…概ねそういうものだと思っていた。

  

そういう訳で、今回の3連休も気づけばノープランで迎えようとしていた。

ただ、しばしば衝動的な行動がおさえられないところのあるミド子は、3連休の初日に近場のイベント参加をねじ込んだ。

近頃急に騒がれている「体験格差」を意識した自己満足とすべきか、

一人で行くのが心細い寂しがり屋なミド子ということか…

それら両方を叶え、補うためという一石二鳥を狙ったのか…

とにかく子供たちを半ば強制的にイベントには連れて行った。

 

夫を誘い切ることはできなかった。

極度に人混みを嫌うのである。

ミド子は都内在住のため、近場のイベントの殆どはそれなりの人出が予想される。

 

人には得手不得手があって、ことさらミド子は子供たちのそれを注意深く意識して子育てをしてきたことになるが、

その過程で夫にも「子供たちに配慮を、理解を」と求めたことが何度もあった。

だがしかし、いつの日か、その配慮の範囲を夫にも、加えてミド子自身にも広げるとしたら?と考えた時、

急に家族を運営することが楽になったような気がした。

特に、子供たちにそれなりの分別がつき、「パパのことも考えてあげて」が通じるようになった頃が分岐点ではないかと思っている。

子供にとって理想の父親像、母親像があったかはわからない。

子供たちに父親・母親を一人の人間として見る目線が芽吹いた時、家族としての機能が強化されたような気がした。

「親として」というなら子供に対する甘えという事かもしれないし、

元々存在していたかもわからない「親の威厳」のようなものはここで名実共に消滅したということになるかもしれない。

それでも「お互いを思いやる」という、よく聞く、もしかすると世間の人はもっと簡単に意識せずに実行していることなのかもしれないが、

そういうことがミド子家でも実現できる可能性があると気づいた時、ミド子は本質的な部分での感動と未来への希望を覚えた。

 

 

 

9月16日。

…そんな9月の3連休の最初の最終日である。

 

人混みと行列を極端に嫌う夫にとって、「何もしない3連休」が終わろうとしていた。

とは言え、さすがに3日目ともなると家にいるのも飽きたのか、

「ゲーセンでも行く?」

と、突然ミド子は誘われた。

 

「行ってもいいけど、行かなくてもいい」

が本心だった。

本来ならばミド子にとって自分の自由が効くはずの月曜日なのである。

ミド子とて「一人で考えを巡らす時間が無いと落ち着かない」とか、色々めんどくさいのである。

ただ、既に、状況的にこの日は「一人の時間」など持てないことが確定しているので、

ここは「行く」一択だと。

夫の誘いに乗ることにした。

 

「ゲーセンなら子供たちも誘ったほうがいいだろうか?」

ふといつもの癖でミド子は意識を子供たちに持っていった。

おそらく夫の誘いは私一人でもいいのだろう。

むしろ、子供たちがいると色々と面倒だと思ってるに違いない。

だかしかし、ただでさえ引きこもりがちな子供たちに外出のきっかけを一つでも増やせれば、と、

ミド子は、それぞれの部屋でそれぞれのPCに向かって、それぞれに好きなことをやっている真っ最中の子供たちに声を掛ける。

「いや、いい。」

「うーん、やめとく。」

 

そうか。そうであろう。

「じゃあ、ママとパパはゲーセン行ってくるからね」

と、誘いの言葉は「行ってきます」の挨拶に変わる。

 

十中八九そんな展開になることは分かっていたのだが、それでもミド子は出掛ける時の子供たちへの軽い勧誘と挨拶はしつこいくらいに欠かさない。

難しい年頃の息子たちに少し疎まれるとは思うのだが、ミド子は家族の見送りに対して少しこだわりがあるのだ。

おそらく、夫が割と危険度の高い仕事をしていた時の見送り方が染み付いているのだろう。

「今日夫に外で何があっても最後に見た姿を忘れないように。」

と。

その裏返しで自分が出掛ける時もきちんと挨拶はしておきたいということなのだ。

 

 

想像の中でミド子は何度夫を死なせてしまったろうか…

  

これはミド子の思考の悪い癖だとは思いつつ、 

「今日は夫に向かい合おう。」

と気持ちを切り替える。

 

思えば二人でゲーセンに行くことを目的として動くなんて…久しぶりのことである。

遥か昔にはしばしばあったのだが、

私達はまたあの頃に戻ってもいいのかもしれない。

これは「夫とデート」なのか?

夫は始めから「私と二人で出かけたい」と言っていたのか!と。

軽く頬がほころんでしまったが、夫にとってはミド子が妄想するような、そういう微笑ましいような、ドキドキするようなことではないのだろう。

「暇つぶし」の時間を共有できる相手として、夫にとってはそれがミド子であるということなんだと思う。

そしてそれは…多分おそらく…ミド子だけができる役目で…

そこにやはりミド子としては…「フフフ」を感じてしまうが…

まぁ、とりあえずは何でもいい、ゲーセンを楽しもう。

メダルをたくさん出して、無心で遊ぼう。

Ⅱ 気づき

実は普段の週末も「1週間分の食料品・その他のまとめ買い」と称して夫と二人で出かけてはいる。

それは既にルーティン化されているので、連休の際の「どこかに行った/行かない」にはカウントされない。

現にこの連休の土曜の昼間にも買い出しには二人で出かけていた。

なので、3連休の最終日、この日の外出は、買い出しは不要で純粋に目的はゲーセンのみ。

ゆえにバカでかいエコバックも不要。

ササッと身支度を整えて、子供たちにしつこいようだが今一度出掛けの挨拶を済ませ、二人で車に乗り込んだ。

 

家を出て、2つ目の角を曲がった頃だろうか、

「まだ暑い」という話から、「いつまで夏なんだ?」という話になり、

「もう来週は彼岸だろ?」という話になった。

 

そこから二人共に

「ああ、墓参りを済ませていなかった!」

と気づくのにさほど時間は必要なかった。

 

夫は3人兄弟の長男で、本来ならば家業を継ぐ立場にあったはずだ。

ミド子と出会った頃、夫はは既に全国転勤のある仕事に就いていた。

何がどうしてそうなったか、一応聞いたことはあるのだが、

どうやらあまり深堀りしてもせっかく取れたバランスを崩すようで、基本的に

「ふ~ん」

という反応しかできないでいる。

 

現状、ミド子家では

「墓だけは長男が守りなさい」

ということになっている。

 

夫は元々…かどうかは分からないが、信心深い…というか験担ぎのようなことは好きなのだと思う。

おそらく私よりハイレベルに神社も拝むし、墓参りも熱心だ。

験担ぎは仕事柄…というのもあるのかもしれないが、

夫の実家の墓も、夫の母方の実家の墓も、私の実家の墓も、どこに行っても汗だくになって墓石を熱心に洗う姿を何度も見て、

義理の母に対して「ああ、素敵な子育てをされたんだなぁ」と白旗をあげるミド子がいる。

 

ただ、今回は、

ゲーセンにするか墓参りにするか夫に迷いはあったように見えた。

「俺はどっちでもいいよー」

と、何度も口にしていた。

 

私が「ゲーセン」と言えば、ゲーセンに行ったろうし、

「墓参りに切り替えよう」と言えば墓参りに行くだろう。

 

ずるい…

 

ただ…私達は長男長女の夫婦。

多分こういう時にゲーセンに行ったとして、当初想定していた開放感みたいなものはもう得られないだろう。

答えは墓参りに決まっている。

 

後は自分達を納得させる何らかの理由を…私に考えろということか。

 

やれやれ。

 

「どうする?」

「どうする?」

 

しばし互いに煽り合いの後、

ミド子はひらめいた。

 

この日は敬老の日。

夜に子供たちにそれぞれの実家に電話させる約束だった。

夫の実家用の話題として、「今日墓参りにも行っておきましたよ」は是非にのせておきたい。

義理の実家から離れて好き勝手にやっている長男夫婦としては、このくらいのアピールをしておかないとバランスが取れないだろう。

 

しかも、どのみち近いうちに行こうとは思っていた墓参りである。

お彼岸の中日を挟む土日は混みすぎるので、それ以外のいつか…

できれば猛暑の日を避けて…でタイミングを測りかねていたのだ。

来週に延ばすとお彼岸の本番で、それ以降だと再来週ということになるが…

幸いなことにこの日は少し曇りがちで直射日光が当たらない分、ほんの少しだけ夏の勢いが息切れしているのを感じた。

 

さあ、

「今日行かないでいつ行くんだ?」

というところまで理由付けができた。

 

ミド子は

「今日は墓参りにしよう」

と結論を出した。

 

Ⅲ 霊園にて

ミド子家の墓地はいわゆる大規模な都立霊園にある。

入口を間違えると本気で迷う。

管理をお願いしている墓石屋さんから仏花を購入して、いつものように墓へ向かう。

いつもと違ったのは霊園の各入口に交通整理員がいたことだ。

この日は霊園の混み具合としては「それほどでもない」であった。

この程度の人出で整理員がいる事自体が少々奇異に感じられた。 

おそらく次週はこの辺りの様子もだいぶ違うのだろう。

整理員さんたちの雰囲気が「来週の予行」にしか見えない。

やはり今週で正解だったのではないだろうか?

我々が「参りやすい」という点においてだが。

 

程なくミド子家の墓の区画に沿った道にたどり着き、いつものように墓参セットを準備する。

墓参セットは常に車に積みっぱなしだ。

家を出てからそのまま急に向かったので、いつもは必須の虫除けスプレーは無かった。

往生際の悪い夫に足裏用の消臭スプレーを手渡され、「なんか臭いがすればいいんじゃね?」と言われたが、

これはライフハックとして認められているのだろうか?

ミド子が手渡された足裏スプレーを試しに夫の体に吹きかけようとすると、

「あった!あった!」

と残り数プッシュと思われる虫よけスプレーが発見された。

「ああ、残り少ないなぁ」

と言いながら、夫はミド子を優先して虫除けスプレーをかけてくれる。

優しい人なのだ。

 

いつもより若干簡易的ではあったが、道具の準備が済んだので、いよいよ墓の方へ向かう。

前回来た時より草はあまり生えていない様子だった。

「ああ、掃除が楽かも。ラッキー!」

と思ったミド子だったが…墓の前でこんなことを考えると…ご先祖様に丸わかりだろうか?

そんなことを考える。

この墓に入っている人にミド子は直接会ったりした人はいない。

でも、おそらく私もこの墓に入れてもらえることになっている…はず。

ミド子自身もそれに異を唱えているわけではない。 

悪い印象を与えないようにミド子なりに誠意を尽くして墓参を続けているのだ。

見通せるのなら、その辺りのところまで見ておいてほしいとミド子は思った。

 

Ⅳ 静かな驚愕

ミド子家の墓参りには一応役割分担があって、夫は敷地や墓石の掃除、ミド子は花器等の掃除などである。

墓石から花器を外して、水場兼ゴミ捨て場で洗ったり、古い花を捨てたりするのだ。

水場まではそう遠くない。

さすがにこの家に嫁いで20年。

慣れた足取りで水場に向かう。

毎年夏に親族が寄り集まってお墓参りイベントが開催されていたが、一昨年くらいにそれは義母により終了宣言がなされた。

義母たちが高齢になったというのが理由だったか。

それ以降、長男夫婦であるミド子達は、ほんの少しだけであるが、墓参りに対する責任感みたいなものが強くなっていた。

この日の墓参も…そういうことの表れでもあるのだ。

この花器を洗う作業も皆で集まっていた頃は子供たちや姪っ子達を引き連れて、もっと賑やかにやっていたことだ。

水場で頭をビショビショにした子供たちを皆でニコニコ眺めた夏が懐かしい。

 

そんなことを思い出しながら、両手に花器と花器用のたわしを持って歩いているミド子の横を「犬の散歩中の御婦人」という表現がピッタリの女性が追い抜いていった。

帽子を目深に被り、サングラスをしている。

日焼け対策を怠って久しいミド子からすれば、日焼け対策バッチリの女性は全員「御婦人」なのだ。

 

ミド子家の霊園はおそらく近所の人にとっては格好の散歩コースなのだと思う。

確かに霊園なので、それなりの雰囲気はあるが、全体としては落ち着いた、開放感のある場所なのだ。

ミド子もここが近所なら散歩をしたり、有名人のお墓を見つけて歩いたりしたかもしれない。

 

その御婦人を見た時もそんな感じの人なのかと思った。

 

その後、花器の掃除を終え、新しい水を満たし、水をこぼさないように来たときよりも慎重に墓の方へ戻っていった。

その時だった。

 

前方から…

先程の「御婦人」が歩いてくる。

 

なぜだ?

なぜ前方??

ミド子はさっきこの人に追い抜かれたではないか?

ミド子自身はその時と180度向きを変えて歩いているのだ。

 

同じ人が同じ方向から来るなんてこと…あるのか?

 

 

考えがまとまらない間に墓に戻った。

夫はいつもと変わらぬ様子で墓石をゴシゴシ洗っている。

先程の違和感に答えを出せないまま、ミド子も墓の掃除ミッションを続行する。

草むしりはもう必要いだろう。

墓石の掃除は道具が足りない。

線香に火を着けるのは…まだ少し早い。

夫が、ゴシゴシしながらジャバジャバと水を使っているのだ。

 

それでは…

 

と、ふと、線香を乗せる台を見ると、灰が結構溜まっている。

そうだ!この灰をなんとかしよう!

 

思いついたミド子はそれを夫に伝え、また水場兼ゴミ捨て場の方へ向かった。

水洗いしたいところだったが、この後すぐ線香をのせるであろうことを考えると、

中身だけ出しておけば問題ないだろう、と。

ゴミ捨て場の付近で線香の皿をひっくり返し、すぐまた墓の方へ戻った。

 

 

…すると…

先程の「御婦人」がまた視界に入ってきたのだ。

今度は…ミド子家の墓のもっと奥の方の墓にいる。

 

なぜ??

さっき、それですら信じられないことだったが、逆向きにすれ違ったはずだ。

なぜミド子の進行方向の先に??

ミド子家の墓も、御婦人がいる墓もそう離れているわけではない。

確かにアクセスするルートは複数あるかもしれないが…

ミド子が使ったルートが最も一般的はなずだ。

ミド子目線では御婦人の現れ方があまりにも不自然なのだ。

 

「幽霊ってこんなにはっきり見えるものだろうか?」

 

瞬間、ミド子は本気でそう考えた。

 

つい最近『准教授・高槻彰良の推察』を12冊通して耳を侵されていた名残もあったかもしれない。

ついにミド子は「怪異」にであったのか?

 

この衝撃を夫に話そうにも、御婦人が着けるライターの音まで聞こえる距離である。

御婦人の方が気になりつつも、粛々と墓参りの作業を進めるしか無かった。

 

作業も最終工程に近づき「線香に火をつける」場面。

なかなか苦戦した。

手持ちのライターを2つ、3つ。

マッチにロウソク…

カチカチ、パチパチ…

 

するとそこに、墓参を終えた御婦人が

「ライターお貸ししましょうか?」

と。

 

ごく普通に流暢な日本語で話しかけてきた。

 

タイミング的には丁度ミド子たちも線香に火を行き渡らせたところであった。

 

「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

 

と、なるべく明るく爽やかに返答する。

 

その後はお辞儀を交わし合い、ミド子は御婦人の背中を見送った。

 

自分たちのお参りも済ませ、これも習慣であるのだが、「墓参りの証拠写真」も撮影し、無事に墓参りミッション終了である。

 

そこでやっとミド子は夫に、先程の御婦人についての話をした。

「あー、あの人、さっきから何回もこの辺をウロウロ…なんか、水の入れ物を取りに行ったり帰ったりしてたみたいよ。」

と。

 

ああ、

怪異などではなかった。

フツーに親切なお墓のご近所さんだ。

 

肩の力が抜ける。

「何を馬鹿なことを言っているのか」という夫の視線を感じるが…ミド子がギョッとしたのは事実なのだからしょうがない。

 

Ⅴ 未来

ホッとしたついでにミド子は更に御婦人に思いを馳せる。

勝手に。

旦那さんの墓参りだろうか。

夫に先立たれてから犬を飼うことにしたのだろうか。

小型犬だった。

 

この瞬間、隣にいる夫をまたもや一旦先立たせてみる。

私も夫の代わり…と称して犬を飼ったりするだろうか。

夫は柴犬やコーギーの出てくるyoutubeチャンネルが好きだから…私も豆柴くらいなら一緒にここまで連れてこれるだろうか…

そもそも夫の墓参りに私はどうやってここまで来たらいいのだろうか?

現状は車。

いや、先立たせるとはいえ、もっとずっと後がいいので、その頃はミド子自身もどんなに運転しやすい車を所有していたとて…

もう運転免許は返納しているくらいだろう。

最寄り駅まで電車、その後…徒歩…?いや、タクシーくらい使ってもいいか?

理想は…子供たちの運転する車で…

長男?

次男?

うーん…想像しづらくなってきた…

まだ自分で運転する方が可能性があるような気がする…

 

悩んだ挙げ句、どストレートに夫に聞いた。

「私、あなたが先に死んだらどうやってここに来ればいいと思う?」

 

「電車で来いよ。」と。 

同時にまたもや「何を馬鹿なことを言っているのか」が刺さってくるが…ミド子家はこのくらいの時がちょうどいいのだ。たぶん。

 

「駅から遠いじゃん!」

と返すと

「長男か次男に車出してもらえばいいじゃん(俺はおっかなくて乗れないけどw)」

と。

その後、しばし、長男と次男にいつどこで車の免許を取らせようかなんて本人たちのいない所で勝手に想像話を膨らませて…

2024年9月の最初の3連休は幕を閉じたのであった。

 

ちなみに、翌週の3連休は無事にゲーセンデートに漕ぎ着けた二人だった。

おしまい。

 

 

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